ビジネスにおいて価格交渉は、単に値段が下がればいいというものではありません。取引先と、中長期的な関係性をつくりながら、良い条件を獲得することが求められます。
しかし、「そのように言われてもどうすれば・・・」と思われる方もいるのではないでしょうか。価格交渉はポイントを抑え、簡単なテクニックを実践することで、誰でも有利に進めることが可能です。
1回目は、価格交渉時の問題点やその解決方法と、価格交渉をするべきかの判断について紹介します。
ビジネスにおける価格交渉は難しい?
これまでのビジネス人生において、価格交渉を経験した人も多いのではないでしょうか。ビジネスでは価格交渉が必要となるシーンが多々あります。
例えば、予算との兼ね合いで安く製品を仕入れ・調達しないといけないというシーンや、契約条件が長い期間見直されていないために価格が高くなっていることに気が付いたといった場面です。
しかし、価格交渉をどのように進めればいいか分からず、納得いく結果にならなかったことから、「価格交渉は難しい」と感じている人が少なくないようです。
価格交渉が難しいと感じる原因は?
ではそのように感じるのはなぜなのでしょうか。多くの原因が以下の3つに集約されます。
・商品(商材)が不適切
1つ目は、「そもそも価格交渉に向いていない調達物に対して価格交渉を行なっているから」です。値下げする余地がほとんどない商品に対して、頑張って値下げ交渉をしたとしても、削減できる可能性は小さいでしょう。
・準備不足
2つ目に、「価格交渉に役立つ事前準備をしていないこと」が挙げられます。例えば、相手の状況を事前に把握せずに挑んでも、感情任せの価格交渉しかできません。これでは、納得がいくまで価格を下げることが難しくなってしまいます。
・スキル不足
最後に、「価格交渉時のスキルが足りないケース」です。価格交渉は、様々な状況を想定し、それに応じた交渉手段を取る必要があります。いくつかの対処法を学んでおくことが解決策になります。
以上の問題をどのように解消していくべきか、これから解説していきます。まずは、「商品(商材)が不適切」ではないか、「そもそも価格交渉に向いていない調達物に対して価格交渉を行なっているか」を確認していきましょう。
そもそも価格交渉をするべきかどうか見極める
コスト削減に取り組む際、すぐに価格交渉に取り組んでいませんか?価格交渉は、交渉する余地がある場合にのみ有効です。
交渉する余地が全くないサプライヤーに対して何度も価格交渉を試みても、もちろん効果はありません。サプライヤーが価格交渉しやすい相手なのかを見極めることが必要です。
そこで確認することは、「調達物の粗利率」と「調達物のサプライヤーが置かれている競争環境」です。
・調達物の粗利率
まず、粗利率とは「売上高から売上原価を引いた『粗利』が占める割合」のことです。粗利率が大きいほど、事業から得られる利益が大きく、逆に製造に必要なコストが小さいことを示します。
すなわち、粗利率が大きい製品ほど、価格交渉によって下げることができる金額の余地が大きいということになります。逆に、粗利率の低い製品に対して価格交渉を行ったとしても、得られる成果は限定的となるでしょう。
・サプライヤーの競争環境
次に、サプライヤーが置かれている競争環境を見ます。サプライヤーにとって競合となる企業が多くいる場合、多少の価格交渉は許容しようとする力学が働きやすくなるため、値下げが行われる可能性が高くなります。よって、競争環境を見ることにより、価格交渉がしやすいのかどうかを判断できます。
競争環境には事業の成長率や、市場シェア率など様々な指標があります。サプライヤーを取り巻くマクロ環境、ミクロ環境の両方を見ることが必要です。
つまり、「粗利率が高く、サプライヤーが置かれている競争環境が厳しい」場合には、価格交渉が非常に有効です。
価格交渉に向いている主な調達物としては、下の表にあるように、携帯電話や電力代、また新たに市場へ参入してきたサービスなどが挙げられます。自社が調達しようとしているものが、交渉しやすいものかどうか、まずは確認しましょう。
さて、次回は、準備の方法が必要なのかについて解説していきます。