ビジネスをしていると、何かの製品・サービスを購入する場面が多くあるかと思います。こういったとき、できるだけ安価に調達したいものですが、皆さんは適切な方法で、有利に価格交渉を進められているでしょうか?

前回は、そもそも価格交渉に向いていない調達物に対して価格交渉を行なっていないかを見直し、交渉の余地がある商品を対象にすることについてご説明しました。

第2回では、価格交渉の決め手となる事前準備の方法を解説します。

価格交渉前に準備すべき4つのポイント

価格交渉は、事前にどれだけ交渉に優位な材料を集めて、臨むかがカギとなります。
そこで、まずは以下の4つの事前準備をしましょう。

・市場価格情報を調べて比較する
・調達物の製造にかかっているコストを調べる
・調達量を明確にし、1つのサプライヤーに集約する
・期間や発注頻度を調整する

では、それぞれのポイントを具体的に説明していきます。

ポイント1:市場価格情報を調べて比較する

まずは、調達物の市場適正価格をリサーチします。市場価格を調べる方法の中で一般的な手法に、「複数の同業他社に相見積もりを取ること」があります。

これを行うことで、契約しようとしている調達物の価格が市場価格と比較して高いときに、「他社ではこの単価で契約が行われている」「他のサプライヤーからこの価格で条件を提示してもらっている」といったことを示唆することができます。これにより、交渉を優位に進めることが可能です。

相見積もりを取ったうえで交渉をする際は、以下の4点に注意しましょう。

・同条件での見積もりを取る

まずは、見積もりがきちんと比較可能なものになっているのか、確認します。数量や契約期間などに差がある場合、どちらが安いのかを公平に判断することができません。

・予算・納期を伝える

また、相見積もりをとる企業間で、予算・納期を統一することが必要です。

・他社がどの程度安い見積もり価格なのかを事前に伝える

予算・納期が異なると、場合によっては見積もり金額が変化する可能性があります。きちんと必要事項を伝えることが必要不可欠です。

・料金の内訳を確認し、再検討したい部分を伝える

また、他社の条件を事前に伝えたり、出てきた見積もりの内訳を確認し、場合によっては再見積もりをとることも忘れずに実施しましょう。

こうした点を押さえた上で、毅然とした態度で交渉に臨むことが重要です。

ポイント2:調達物の製造にかかっているコストを調べる

2つ目のポイントは、「サプライヤーがサービス提供に要するコストを推計する」ことです。

これを原価積算と呼びます。原価積算によって算出されたサプライヤー側のコストと実際の見積もり価格を比べることにより、交渉余地をある程度推計することができます。

原価を推計するステップとして、以下3つの手順を実践しましょう。

1.見積もりの内訳を見る

見積もりを取る際に、各コストの内訳価格を見ます。これにより、調達物の大雑把なコスト構造を把握します。

2.原価を積み上げる

原価を、算出可能な粒度まで分解します。上図のビル清掃費の場合、コストを人件費、b品代、間接コストに分け、それぞれの項目を積み上げていきます。

3.理論価格を出す

実際に各要素に数字を入れ、理論価格を計算します。この際に当てはめる数字は、一般的な市場価格の数字を当てはめます。市場価格は、積算資料などを参照するとよいでしょう。

ポイント3:調達先を1つのサプライヤーに集約する

3つ目のポイントは、「スケールメリットを効かせて、契約条件を適正化する」ことです。

サプライヤーの製品提供にかかるコストは、大きく固定費と変動費の2つに大別することができます。

変動費は販売数量に対して比例的に増加する特徴があります。逆に固定費は、販売数量に関わらず一定です。したがって、販売数量が増えるにつれ、1つのサービスあたりにかかる固定費は減っていきます。そのため、価格交渉においては、発注数量を増やすことで支払い単価を下げる努力が重要です。

発注数量を増やすためには、分散している発注先を1つに集約することが効果的です。そのために、今までの契約状況をきちんと把握し、分散発注している取引はないかを確認しましょう。調達状況を可視化した後に、必要な調達量だけを集約することで、より契約条件が良くなります。

ポイント4:期間や発注頻度を調整する

4つ目のポイントは、「契約期間や発注頻度を調整すること」です。
サプライヤーにとって都合の良い時期や、手段で購入することで、価格を下げられる可能性があります。

たとえば多くの企業では、その期の売上目標値を定めています。そのため、決算期を迎えるにあたり、売上数値が目標に到達しない可能性がある場合には、決算月に目標を達成するため、多少割引をしてでも取引を行うという力学が働きやすくなります。

また、長期在庫による汚損した製品を翌期に持ち越さないように、決算期に割引を行って消費しようとすることもあります。

よって、サプライヤーの決算時期に合わせて製品を購入することは、価格交渉を有利に進めるために有効です。

他にも、今まで1ヶ月に1度発注していた製品を、3ヶ月に1度の発注にまとめるなど、工夫次第でノーコストで価格交渉を実現する方法もあります。1回あたりの発注量が増えるので単価を下げることができる上、サプライヤー側も製品を発送する際にかかる発送費を抑えられるので、双方メリットがあります。

このように、決算時期や発注手段を見直し、先方が妥協できそうなポイントを探しておくことも、価格交渉につなげるために有用でしょう。

さて、次回は、価格交渉においてどのようなスキルが必要なのかについて解説していきます。