自社オフィスを保有している会社は施設管理費がかかってきます。清掃費、常駐警備費用などの他に、エレベーター保守費用というものもあります。

従業員が、毎日利用するエレベーターですが、エレベーターは設置費用以外に多くのメンテナンス費用がかかっています。その額は、一台につき年間数十万~数百万円と決して小さくありません。

そこで今回は、「エレベーターの保守費用」のコスト削減手法をご紹介します。

エレベーター保守の経費削減に取り組むメリットとは

ずはり、コスト削減を実現するまでのハードルが低く、インパクトが大きいためです。

エレベーター保守費用のコスト削減は、極端に言うと、実現のために社員の協力を必要としません。担当者がエレベーターの保守契約を見直すだけで良いので、コスト削減実現のためのハードルは低いと言えるでしょう。

また、ある程度の規模の会社では、年間数百万円がエレベーター保守に使われています。元々使われている金額が小さくないだけに、少しの割合をコスト削減できれば、インパクトのある成果を出すことができるでしょう。

エレベーター保守費用削減のための手順

エレベーター保守の経費削減に取り組む際、初めに把握しておきたい事項として、エレベーター保守費用が「どのような要素によって変化するのか」があります。保守費用の決定要素を理解することで、どこに削減余地があるのかを発見しやすくなります。

エレベーターの保守費用は、「契約会社の分類」と「契約形態」といった決定要素があります。契約会社の分類と契約形態を自社の現状にあったものに見直すだけで削減余地があります。

そこで、エレベーターの保守費用のコスト削減へのステップは以下の3つです。

ステップ1. 自社のエレベーター保守点検費用の可視化
ステップ2. 各種条件のチェック
ステップ3. 相見積もりを取る

実際に契約を切り替える際、最も良い形で経費削減を実現するためには、相見積もりをした上での価格交渉が重要になってきます。

具体的なステップについてみていきましょう。

ステップ①自社のエレベーター保守費用の可視化

まずは、自社が「どの会社」と「どんな契約を結んでいるのか」明確にすることで、どのくらいの費用をエレベーター保守点検費用に使っているか把握しましょう。

エレベーター保守の契約会社は、メーカー系と独立系の2つに大別されます。

◆メーカー系とは

製造メーカーの関連会社がメンテナンスを提供する場合、メーカー系のエレベーター保守会社に分類されます。エレベーターの部品や機能など、最新情報を網羅している一方で、部品の開発コスト等も上乗せしているケースが多く、比較的価格が高くなるケースが多いです。

◆独立系とは

メーカー系列に属さない会社のことです。メンテナンスや修繕に必要な部品を、必要な時だけメーカーから取り寄せているため、開発コストもなく低価格であることが多いです。当該製品に関する詳細な情報は持ち合わせていないこともありますが、顧客ニーズに合わせたサービス提供が可能という特徴があります。

このように、コスト面だけを見ると、製造・開発コストが費用に含まれるメーカー系に対し、独立系のエレベーター保守会社の方が、安価になりやすい傾向があります。

また、契約形態では、フルメンテナンス・POG契約の2種類に分かれています。

◆フルメンテナンスとは

エレベーターの各装置・部品の点検や調整をし、故障(人為的でないもの)、劣化した部品の交換、修理を行います。フルメンテナンス契約では、修理費は月々の保守料に含まれており、突発的な修理、部品交換やワイヤー取替え工事代金などの心配がありません。

◆POG契約とは

パーツ(P)、オイル(O)、グリス(G)の略で、電球・ヒューズ・リード線などの消耗品、オイル等の保守に必要なものを保守料に含み、その他の部品の交換・修理は別料金となります。フルメンテナンス契約とは異なり、部品の交換や修理があればその都度追加で料金を支払う必要があります。

つまり、築年数が長く大規模に修理が必要そうであればフルメンテナンス契約、取り替えたばかりで修理等がそれほど必要なさそうであればPOG契約にする、などと判断します。

ステップ②各種条件のチェック

次に、契約する際に求める条件をチェックしましょう。

条件には「保守回数」「価格帯」「技術やサービス」「災害時の対応」などの項目があります。

たとえば、部品の交換や修理のサービスの有無は、頻繁にそのサービスが必要になるかどうかで決めると良いでしょう。

◆トラブル対応

エレベーター保守を依頼する時にコスト以外で気になるのが、トラブルへの対応速度です。

一口にメーカー系といっても、会社によってサポートの充実度合いは異なります。また、独立系のなかでも、それぞれの都道府県に根を張る地場の会社もあれば、全国に拠点を持つ会社もあります。

コストと同様ですが、自社の規模や立地などによって最適な契約会社は異なるはずです。一概にどちらがよいとは言えないため、「メーカー系」「独立系」といった区別ではなく、自社の条件にあった会社を選定するよう心がけるとよいでしょう。

ステップ③相見積もりを取る

相見積もりとは、複数のサプライヤーに同じ条件で見積もり依頼を取り、価格や条件を比較することです。

新たな取引先を決めるときに、1社から見積もりを取っただけでは、条件が良いのか悪いのかを判断することができません。そこで、より良い条件で購買活動をするためにサプライヤーマネジメントを行い、どの会社がどこに強みを持ち、どんな条件で契約できるのか知る必要があります。

また、サプライヤーに相見積もりを取る際は、担当者に「他のサプライヤーにも同じ条件で見積もり依頼をしている」ことを伝えましょう。

事前にその旨を伝えてから見積もり依頼をすることで、他のサプライヤーとの競争環境を作り出し、より有利な条件を引き出せる可能性が高くなります。

主要なエレベーター保守会社2社をご紹介

最後に、代表的なエレベーター保守会社を「メーカー系」「独立系」からそれぞれ1社ご紹介します。

◆メーカー系:三菱電機ビルテクノサービス(株)

https://www.meltec.co.jp/?_fsi=I6csukcR

【特徴】
業界を牽引するリーディングカンパニーです。
・Webから遠隔で、エレベーター内ファンのON/OFFが設定できる
・Web上にアップロードした報告書を、パソコン/スマホから閲覧可能
・オプションで「スマホでエレベーターの呼び出し機能」「モーションサーチ(※)」などが利用可能
・通常プランで24時間365日遠隔点検に対応
※モーションサーチ:「エレベーター内の動きが異常に激しい」「乗客が長時間動かない」という緊急事態を検出し、警告アナウンスや各階停止を行う機能

メーカー系ならではの高機能・サポートの手厚さが特徴です。通常プランに「24時間365日点検」が含まれているのも安心です。

◆独立系:エス・イー・シーエレベーター(株)

https://secev.co.jp/?_fsi=I6csukcR

【特徴】
創設50年以上の老舗で拠点数、保守台数等で独立系NO.1です。
・各主要メーカーの部品を豊富に取り揃えている
・拠点数が全国に150箇所、災害・トラブル発生時に迅速な対応が可能
・オプションで、24時間365日遠隔点検サポートを受けることが出来る
・遠隔点検で得たデータ蓄積から、未来のデータ(コンディション)を収集し、点検の時期予測が可能

独立系の中でも、数多くのメーカーの部品を取り揃えており安心といえます。24時間サポートはオプションになりますが、その分、他の条件を統一して比較すると、基本料金が安くなっています。

コスト削減効果は?

◆インパクト: 中 小
◆難易度:★★☆☆☆
◆効果発現時期:短期 中期 長期

 

エレベーター保守費用は、従業員の協力を要さず、契約を切り替えるだけでコストが削減できる可能性があります。他の費目と比べても、「簡単に、大きな削減効果を」生み出せる費目の1つと言えるでしょう。まずは社内でエレベーター保守費用の実態を調査するために、契約の見直しから始めてみてはいかがでしょうか。