前回、無理なく人件費を削減することが重要であり、そのために「段階的・継続的に計画を練る」こと、「業務量の削減から始める」ことの2つのポイントをお伝えしてきました。

今回は、人件費削減を行うための4つの具体的なステップをご紹介します。

1. 業務改革(BPR)を行う

業務量の全体像を把握する重要な手段として、BPR(ビジネスプロセス・リエンジニアリング)があります。BPRとは、Business Process Re-engineeringの略で、ある目標を達成するために、企業活動や組織構造、業務フローを再構築することです。

BPRのやり方は様々ですが、一般的なプロセスは以下の3つです。

・既存の業務プロセスを棚卸する

・不要なプロセスを廃止する

・非効率なプロセスについて、標準化/自動化(システム導入)を検討する

既存の業務プロセスを棚卸する

まず、BPRの対象とするプロセスを定義します。「どの範囲のプロセスを対象に見直しをするのか」を明確にし、着手すべきポイントを可視化します。その上で、細かく可視化された業務内容を全体のプロセスの中に組み込み、フローチャートを作成します。

不要なプロセスを廃止する

フローチャートから見えてきた無駄なプロセスをまずは削除しましょう。とくに属人的な業務に、無駄なプロセスが隠れていることが多いです。例えば、電子申請に切り替わった会社であるにも関わらず、契約書類を紙に印刷する作業。このような他のプロセスに影響することなく業務を削減できるものに関しては削除しましょう。

また、他の部署と密接に関わっており簡単に変更できないけれど、効率的ではない業務はありませんか。プロセス全体から見ることで、各部署では最適であっても他の部署に負担をかけている業務にも着目することができます。そのような業務に対しては工夫をし、プロセス全体でみて効率的な業務に変えてあげましょう。具体的には、採用面接をWeb面接に切り替え、どの部署・役職に対しても同じ工数に整えることなどが挙げられます。

非効率なプロセスについて、標準化/自動化(システム導入)を検討する

業務プロセスが統一されていないと、業務の進捗度合いや品質にばらつきが出てしまいます。このような事態を避けるために、使っているシステムや業務プロセスを標準化し、業務の質を向上させます。例えば、ナレッジシェアツールを使い営業ノウハウを蓄積し、平準化することです。これによって、研修効率も上がるうえ、質も改善されます。

このようにBPRによる業務効率化を進めることができたら、次はできるだけ少ない人数で業務を遂行できるような要員計画を作ります。要員計画とは、業務量のインパクトに応じて人員を配置していくことです。要員計画を考える際に有効な人材の配分方法として、「多能工化」があります。

2. 多能工化による繁閑調整

「多能工化」とは、複数の業務をこなせる人材を育てることです。繁閑差のばらつきが大きい業務が存在する場合、様々な業務をこなすことができる人材の有無によって人件費も大きく変わります。

例えば、営業事務とコールセンターが必要な会社があるとします。この場合、片方の業務しかできない社員がいる場合は、朝と夕方に業務が集中する営業事務スタッフと営業時間に業務が集中するコールセンタースタッフを別々に雇う必要があります。しかし、両立が可能になれば、雇う社員数も減り、人件費も抑えることができます。

多能工化により、担当業務による社員の負荷を平準化することができます。また、様々な不測の事態に対して柔軟に対応することができます。

3. 業務のアウトソース化、DXによる業務の削減

経理や事務処理などの単純作業で、内製化する必要のない業務が案外多いという企業もあるのではないでしょうか。そのような企業にとって、特定の業務を委託することは人件費削減の観点はもちろん、業務効率化にも役立ちます。単純作業のアウトソースを行うことで、社員は複雑かつ重要な本業務に専念できます。単純作業については、アウトソース化による社員の負担軽減と、アウトソースする際のコストを比較し、導入を検討することが必要です。

また、DXによる業務の削減ができないのかについても見直しで見ましょう。DXとはDigital Transformationの略です。部署・役職ごとに負荷の大きいプロセスの棚卸しをし、ソリューションの特定、費用対効果の精査、導入するためのボトルネックの特定し、導入を実行しましょう。

4. 要員計画の見直し

業務効率化、多能工化等による、業務量へのインパクトを試算します。具体的に組織の要員計画へ反映していきます。例えば、シフト調整、採用抑制などです。場合によっては休業や異動・配置転換も検討するべきかもしれません。その際、合わせて活用できる補助金や助成金がないか検討するとよいでしょう。

まとめ

人件費削減の4つのステップを押さえられたでしょうか?給与カットやリストラなどネガティブなイメージが連想される人件費ですが、段階的に人件費削減を実行することで大きなコスト削減効果が見込めます。

フローチャートを作成することにより、製品が顧客に届くまでのプロセス全体からみた効率性を可視化できます。業務効率化に着手する際にも、現場社員に対して業務効率化の意図がきちんと伝わりやすくなり、社員の不満解消にもつながります。企業のビジネスプロセスごとにやり方、削減箇所は異なるので、自社に負担にならない削減箇所を洗い出し、適切な人件費削減に取り組んでみてはいかがでしょうか。